“ヘルシー”の新解釈が追い風に。未利用魚を牛脂で揚げるフィッシュ&チップス店
America [Providence]
2026.08.17
text & photographs by Kuniko Yasutake
「デューン・ブラザーズ」の「ザ・オリジナル」。ポラックなどタラの仲間の白身魚を使用。厚切りのジャガイモを堅めに揚げた「ケトルチップス」を衣に、揚げ油には牛脂を使う。塩味を抑えた自家製コールスローとピクルスの酸味が後味を軽やかにまとめる。
米国ニューイングランド地方の夏の楽しみのひとつは、海辺の気取らないレストランで味わうシーフード。北大西洋の反対側、本場イギリス由来のフィッシュ&チップスは、同じ海の魚に恵まれたこの地でも定番だ。そんなクラシックなメニューに3つの工夫を加え、2017年の創業以来支持されているのが、ロードアイランド州プロビデンスの「デューン・ブラザーズ(Dune Brothers)」である。
人気メニュー「ザ・オリジナル」は、白身魚のフライをチーズと共に温かいバンズで挟んだ一品。企業秘密のミックス粉とビールを合わせたバッター液に、「ケトルチップス」と呼ばれる釜揚げ製法のポテトチップスを砕いて加えることで、最後の一口まで軽快な“バリザク食感”を生み出している。
フィッシュ&チップスには、地元漁師から直接仕入れるドッグフィッシュ(小型のサメ)やエイなど、市場ではあまり流通しない魚を積極的に使用。米粉、ビール、ウォッカを合わせた軽い衣が、それぞれの魚の持ち味を引き出す。
そして最大の特徴が、揚げ油に100%ビーフ・タロー(精製牛脂)を使っていること。発煙点が高く高温調理に適しているため短時間で調理でき、魚はしっとり、衣はギトギトせずに軽く香ばしく仕上がる。牛脂ならではのコクも加わり、食後に油っぽさが残りにくい。
実は近年米国では、「ヘルシー」をめぐる価値観が変化している。超加工食品や工業的に生産された種子油(シードオイル)を避けようという声が高まり、動物性油脂を使った調理法が見直されているのだ。牛脂や牛脂使用を全面に出した製品の売り上げは、過去3年で爆発的に伸びており、こうした流れは、デューン・ブラザーズにとっても追い風となっている。
さらに同店は、漁師・料理人・研究者・消費者を結ぶネットワーク「スロー・フィッシュ・ノース・アメリカ(Slow Fish North America)」への参画を表明し、地域の沿岸漁業を未来へつなぐ活動に力を入れている。ダウンタウンの小さなシーフードスタンドとして始まり、去年はフードホールに出店し、近郊では新拠点の開設も計画中。ニューイングランドの魚食文化をこれからどう牽引していくのか、注目したい。
◎Dune Brothers
Providence Shack店(春~秋のみオープン)
11:00~19:00
月曜、火曜休
Track 15店(通年営業)
11:30~21:30(金曜、土曜11:00~22:00、日曜11:00~21:00)
無休
ザ・オリジナル フィッシュサンド 18ドル
エイヒレ フィッシュ&チップス 24ドル
https://www.dunebrothers.com/
1ドル=158円(2026年8月時点)