受刑者が働くレストランを開いた76歳の社会起業家が、“飲食業界で最も活躍した女性”に
Italy [Milano]
2026.08.27
text by Mika Hisatani
刑務所内のレストラン「イン・ガレーラ」を立ち上げたシルビア・ポッレーリさん。「私たちのプロジェクトは決して慈善活動ではありません。ここで必要なのは、本物の仕事を提供することなのです」。受刑者スタッフの犯罪歴を問うことは一切しない。
ミラノのボッラーテ刑務所内で運営されるレストラン「イン・ガレーラ(In Galera)」の創立者シルビア・ポッレーリさんが2026年3月、イタリア全国紙『コリエレ・デッラ・セーラ(CORRIERE DELLA SERA)』が開催する「Women in Food 2026」において、飲食業界で最も活躍する15人の女性の1人に選ばれた。
2026年度版『ミシュランガイド イタリア』を始め、あらゆるガイドから評価されているイン・ガレーラは、2025年に開業10周年を迎え、これまでに延べ20万人を超える客を迎えてきた。同レストランを実現させた社会的協同組合「ABC La Sapienza in Tavola」の代表であるポッレーリさんは、幼い頃から料理に情熱を注ぎ、ミラノでケータリング事業を展開。その経験を生かして、受刑者が食をツールとし、出所後の就労へつながる仕組みを築き上げた。刑期中に社会復帰に向けた実践的な更生の機会を提供すると共に、受刑者に対する社会的偏見の払拭を目指す。
「“受刑者の更生プロジェクト”と聞いて多くの人が抱く固定観念を、良い意味で裏切りたかったのです」。そう笑顔で語るポッレーリさんは76歳とは思えないエネルギーと行動力で、現在も現場の第一線に立ち続けている。
イン・ガレーラの最大の特徴は、受刑者がプロのシェフや支配人の指導の下、調理やサービスを担っていることだ。これは単なる「職業体験」ではなく、出所後の社会復帰を見据えた実践的な就労の場として運営されており、働く受刑者には一般社会と同様に給与が支払われる。
レストランは事前予約が必要で、身分証明書を提示すれば誰でも利用できる。刑務所入口で本人確認などのセキュリティチェックを受けた後、職員の案内で施設1階のレストランへ向かう。扉の向こうに広がるのは、到底刑務所とは思えない空間だ。50席のダイニングには、厳選されたワインがずらりと並び、温かな照明の下には美しくセッティングされたテーブルが整然と並ぶ。客の中には正装したミラノのエリート層も多い。
提供されるのは「社会貢献レストラン」という枠を超える本格的な料理だ。地元食材を生かした季節のメニューを、ソムリエが選ぶワインと共に味わうことができる。その洗練された空間に身を置くと、ここが刑務所の中であることを忘れ、誰もが不思議な感覚に包まれる。
同刑務所は、職業訓練や就労プログラムに参加した受刑者の再犯率が、他の刑務所と比べて大幅に低いことが報告されている。“食を通じて更生を支える”という理念を力強く体現しているイン・ガレーラは、上質な料理を通して誰もが持つべきである「尊厳」「働くことの価値」、そして「穏やかで上質な豊かさ(ジェントル・ラグジュアリー)」というポッレーリさんの理念を発信し続けている。
◎In Galera
Via Cristina Belgioioso, 120 20157 Milano
☎+39-334-3081189
日曜、月曜休
ディナー4皿のコース70ユーロ
ベジタリアンコース60ユーロ
https://www.ingalera.it/
1ユーロ=182円(2026年8月時点)
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