生産50周年を祝うNY・ロングアイランドのワイン 気候変動がプラス効果に
America [New York]
2023.09.14
text by Akiko Katayama
米国ワインといえばカリフォルニア産、と思いがちだが、他州でも優れたワインが多く造られている。名産地の一つが、マンハッタンの北東に位置するロングアイランドだ。小説『グレート・ギャツビー』の舞台ハンプトンがある地としても知られる。
17世紀に欧州からの移民がこの地でワイン造りを試みたものの、米国原産種しか育たず、ワイン市場の主流である欧州系品種の栽培は不可能とされていた。しかし、1951年にクロアチア移民のブドウ栽培学者がその生育に成功。73年には初の商業用ブドウ畑が誕生し、以来順調に発展を遂げ、ロングアイランドには現在57のワイナリーが存在する。そのそれぞれが試行錯誤を重ねてテロワールを構築してきた。
テロワールとは、ワインの個性を生み出す気候、地勢、土壌ほか、多彩な要素を吟味して最高のおいしさを生み出そうとする、造り手の努力の集大成ともいえる。そんな造り手の 1人が「マッコール・ワインズ(McCall Wines)」のワインメーカー、ミゲル・マーティン氏である。スペイン出身の氏は、母国で経験を積んだ後、チリ、オーストラリア、カリフォルニアといった新興ワイン生産地で、それぞれの可能性を探究。その氏が行き着いたのがロングアイランドなのだ。
「大西洋に浮かぶ半島ロングアイランドでは、温暖な海風のおかげで穏やかにブドウが成熟します。結果、ブドウ本来の風味が育まれ、その味わいを引き立てる清らかな酸味を備えたバランスの良いワインが生まれるのです」
また気候変動が目立つ昨今、比較的冷涼なこの地では、温暖化がプラスの効果をもたらしている様子だ。「たとえば15年前に植樹したスペイン原産種のアルバリーニョは、近年ことに良いワインに仕上がっています。これからますますロングアイランドのワインの可能性が広がっていくと強く感じます」と氏は話す。
(写真トップ)ロングアイランドはマンハッタンから車で2時間ほど。「マッコール・ワインズ」のワイナリーではテイスティングもできる。
◎LONG ISLAND WINE COUNTRY
https://liwines.com/
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