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JOURNAL / 世界の食トレンド

在来種のイタリア野菜とアジアの調味料の融合。プーリア発の新感覚保存食ブランド

Italy [Pulia]

2026.04.16

在来種のイタリア野菜とアジアの調味料の融合。プーリア発の新感覚保存食ブランド

text by Manami Ikeda
プーリア州はトマトの一大生産地。ダッテリーノというナツメのような細長い形の甘みの強いミニトマトを使ったソース。

南イタリアのプーリア州はイタリア随一の野菜生産地として知られる。それは広大な平地を利用した大規模農業のおかげだが、その陰で在来種の野菜栽培を続けるマイクロ農家も存在している。

彼らの作物は現代の流通システムには乗りにくく、地元で細々と消費されるのが常。このままでは消滅するかもしれない――そんな在来種文化を守ろうと、2人の若い男性が2024年の終わりに立ち上げたのが、保存食品ブランド「マテリア(Materia)」だ。“素材”というブランド名の通り、野菜そのものの味わいを生かしつつ、コンテンポラリーかつインターナショナルな感覚を組み込んだソース、ペースト、パテなどを手がけている。

プーリア州中部
アルタ・ムルジャと呼ばれるバーリを中心とするプーリア州中部は、豊かな農業地帯として知られる。

ユニークなのは、日本や韓国の発酵調味料文化を取り入れているところ。赤味噌や白味噌、コチュジャンなどの旨みをイタリア野菜にプラスすることで、新たな味の世界を創造することを大きな柱にしている。設立者の1人であるジュゼッペ・マストロピエトロ氏は日本を何度も訪れ、居酒屋に通い、日本食の根幹をなす味わい、すなわち「旨み」に魅了されたと言う。その体験をイタリアの素材を通して昇華させたいという思いがマテリア誕生の源だ。

ジュゼッペ・マストロピエトロ氏(右)とミケーレ・コスタンティエッロ氏
マテリアの立者ジュゼッペ・マストロピエトロ氏(右)とミケーレ・コスタンティエッロ氏。ジュゼッペ氏はロンドンの五ツ星ホテルでキャリアを積んだ後、韓国へ。6年間の滞在中、日本へも足繁く通った。

たとえば、カルドンチェッリというプーリア州のアルタ・ムルジャ地域特産のキノコと赤味噌のパテ(7ユーロ/200g)は、大阪で出会ったシイタケの味噌汁が発想の元となっている。カルドンチェッリの風味と味噌の旨みが合わさって独自の味を楽しめるこのパテは、発売してすぐに人気となり、今やマテリアを代表するベストセラーだ。おすすめの食べ方は熟成チーズやサラミに添えたり、シンプルにパンに塗ってそのまま味わうのもいい。

アルタ・ムルジャの特産品カルドンチェッリ
アルタ・ムルジャの特産品カルドンチェッリ。
カルドンチェッリと赤味噌のパテを使ったリゾット
カルドンチェッリと赤味噌のパテを使ったリゾット。
チーマ・ディ・ラーパとドライトマトのクリームを炙ったパンに挟んで
チーマ・ディ・ラーパとドライトマトのクリームを炙ったパンに挟んで。

在来種のトマト、カボチャ、キャベツ、ナス、ひよこ豆のパテやクリームの他、ジャルディニエラ(いろいろ野菜の酢漬け)やジャムなど、アジア調味料を使っていないものも多いが、いずれもちょっとユニークな素材の組み合わせが目を引く。イタリアの普段の食卓に楽しい変化を与え、やがてはイタリア料理に根付いていく可能性を秘めたマテリアのこれからに注目したい。


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