インド・ゴアで話題の“コーヒーホテル”。泊まって味わう新しいスペシャルティ体験とは
India [Goa]
2026.05.28
text by Akemi Yoshii)
ホテルの心臓部とも言えるロースタリーでは、焙煎工程や産地・加工法・特徴を学べる他、テイスティングや抽出体験を楽しめる。小さな蓄音機のような形状が目を引くのはタイ・Squeaky社のコーヒーアロマディスプレイHOM Chubby。エアポンプを押すと、容器に入っているコーヒー豆のアロマを確認できるすぐれもの。
世界第7位のコーヒー生産国でありながら、チャイの国として知られてきたインドで、コーヒーの位置づけが急速に変化している。特にスペシャルティコーヒー市場が好調で、消費を牽引しているのは若い世代。コーヒーは単なる飲み物でなく、ライフスタイルそのものになりつつある。
2025年10月、インド西部ゴア州アッサガオ村に、インドではもちろん、世界でも珍しいコーヒーをテーマにしたホテル「アンシーン・アッサガオ(Unseen Assagao) 」がオープンした。経営は、2004年に創業し、インド国内で34店舗を展開するコーヒーチェーン「コーヒーカルチャー(CC)」だ。
「コーヒーで、もしホスピタリティ体験全体を形作れるとしたら?という問いから、このホテルは生まれました」と、CC創業者のガウラヴ・ナラン氏。
アッサガオ村は、アラビア海に面したゴアのリゾート地の喧騒から離れた、緑が多く静かなエリアにある。コーヒーチェリーを思わせるような地元の赤土ラテライトを使った壁が印象的なホテル外観が、村の風景によく馴染む。
アンシーンには、宿泊設備だけでなく、ロースタリー、カフェ、ベーカリー、バーが併設されており、朝から夜まで、コーヒーを軸にした体験を楽しむことができる。
このホテルならではのシグネチャー体験が、「OMAKASE」と称したコーヒーのおまかせコースだ。産地、加工方法、抽出スタイル、フードとのペアリングなど、コーヒーの様々な表現を専門家のキュレーションで探求する。4〜5品のコース(45〜60分/1500ルピー〜)で構成され、先入観なしで味を体験できるようブラインドテイスティングを導入。毎回内容が変わるため、訪れるたびに新しい発見があるのも一期一会を思わせる。
「日本の伝統的なおまかせでは、料理人が体験をリードしますが、ここでは焙煎士がその役割を担います」と、ナラン氏は説明する。コーヒーキュレーターである焙煎士を信頼し、ゲストはコーヒーの奥深さや可能性を堪能できる仕組みだ。
「スローライフと没入型のホスピタリティ」という、アンシーンのコンセプトに共感する滞在客は多く、コーヒー愛好家はもちろん、新しい旅の体験を求める旅行者の間でも注目を集めている。
「場所、文化、そして職人技という理念を大切に、今後もコーヒーを中心としたホスピタリティモデルを他の地域にも展開していく予定です」とナラン氏。
インドのコーヒー文化の最前線で、ひとつのテーマに絞った新しい滞在の形が生まれたのは、飲食業態の可能性を考えるヒントになるかもしれない。また、そこに日本のおもてなし文化が息づいているのも興味深い。
◎Unseen Assagao
Survey No. 90/3, Branch Post Office Assagao, Near Village Panchayat, Goa 403507 India
Pour over インド産コーヒー210ルピー、海外産コーヒー310ルピー
Nitro Coffee 220ルピー
Latte Spanner 320ルピー
宿泊料金 Studio 1泊5853ルピー(税込み・朝食付き)~
https://www.unseenboutiquehotel.com/
*1ルピー=1.65円(2026年5月時点)