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JOURNAL / 世界の食トレンド

ロサンゼルスで独自の表現を築くスペイン出身三ツ星シェフ、アイトール・サバラの世界

Spain [Madrid]

2026.05.25

ロサンゼルスで独自の表現を築くスペイン出身三ツ星シェフ、アイトール・サバラの世界

text by Yuki Kobayashi
「トウモロコシと海(Corn And the Sea)」。カルフォルニアに見られるメキシコ、アジアなど異文化の混交を表現した一皿。小麦粉を使わず、卵黄だけで仕上げたラビオリは、蒸すことで繊細で薄い膜状になる。星型に成形されたラビオリの中には、メキシコ・オアハカ産のウイトラコチェ(トウモロコシの黒穂菌)のクリーム、タマネギ、エバソテ(アリタソウ/メキシコのハーブ)、キノコのエキス。ラビオリの下にはトウモロコシのクリーム、爽やかなシトラスキャビア(フィンガーライム)や、甘味のアクセントにアジアを象徴する甘エビを。青トウモロコシ粉にスピルリナを加えた紫のパンに、澄ましバターを塗って添えている。

スペインにおいて、シェフの自己表現の場でもある“デグスタシオンメニュー(少量多皿のテイスティングコース)”という形式は、批判的・悲観的見解も多く、今やその存続すら問われつつある。そうした状況のなか、国外において独自の料理表現を緻密に掘り下げてきたシェフがいる。

2025年、ロサンゼルスで三ツ星を獲得したアイトール・サバラ(Aitor Zabala)は、バスクにルーツを持ちながらバルセロナで生まれ育った。エル・ブジに薫陶を受け、サンセバスチャン「アケラレ」などで研鑽を積んだのち、渡米した。

アメリカでは、スペイン料理の普及に大きく寄与したホセ・アンドレスのもとで経験を重ねる。2018年、ビバリーヒルズに「ソムニ(Somni)」を開店し、同年に二ツ星を獲得するも、パンデミックにより閉店を余儀なくされてしまう。

その後の約5年間は、同シェフにとって特異な時間となる。2026年のマドリード・フュージョンに初めて参加した彼は、「料理にタイトルやスタイルといったラベルを付与することに違和感がある」と語り、営業を停止していた期間は、提供を前提とせず、ひたすら料理を作り続けていたという。

2024年11月、ウェスト・ハリウッドにてソムニを再開すると、翌2025年には三ツ星へと到達する。「アイデンティティを規定するのではなく、料理を継続した結果として“ソムニらしさ”が認識されるに至った」と述べるアイトール。その皿は、ミロの抽象絵画を想起させる造形性を帯びる。

移民としてアメリカに拠点を置く立場から、自身の出自に加え、多様な人種と食文化が交錯する土地性を読み解き、再構築する試み。そこにはエル・ブジ以降の系譜を想起させる要素が認められると同時に、現代において数少ない、明確なスタイルを備えた表現として位置づけることができるだろう。

数々のディベートで盛り上がっていたマドリード・フュージョンの会場で、淡々としかし確実に言葉を選び、インパクトのある料理を発表したアイトールシェフ。独自のペースと美意識で新境地を切り開いている。

アンコウのブラック&ホワイト
「アンコウのブラック&ホワイト(Monkfish in Black and White)」。バスクへのオマージュの一品。アンコウの頬肉を頭部から丁寧に取り出し、顎肉(ココチャ)の部分は付けたまま、骨はそのまま持ち手として利用し手で食べるスタイルに。グリルした頬肉に、アンコウの皮から作るピルピルソースとバスクの伝統イカスミソースで白と黒を表現した。

Somni Restaurant
https://www.somnirestaurant.com/

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