ストリートフードに広がる“野菜を主役”にする発想
France [Paris]
2026.08.24
text by Sakurako Uozumi
ビーツ、レンズ豆、ひよこ豆、赤インゲン豆、オートミール、マッシュルームのデュクセル(きのこを細かく刻んで炒めたもの)を合わせた植物性パティに、チェダーチーズを2枚重ねた「Double Cheese」。やわらかく仕上げたパティは、注文ごとに鉄板へ押しつけながら焼く“スマッシュ”によって、表面は香ばしく、中はしっとりとした食感に仕上がる。ビーツの甘味とデュクセルの旨味、数種の豆が織りなす風味に、チェダーチーズのコクが重なり、肉を使わずとも食べ応えのある一品となっている。12.90ユーロ
パリでは近年、野菜をめぐる料理の発想が変わりつつある。「肉を使わない料理」や代替肉を用いた「ベジタリアン料理」から、積極的に植物の可能性を探究するスタイルへ。その流れを象徴する1軒が、2024年8月にオープンしたストリートフード店「マニ(Mannie)」だ。
コンセプトに掲げるのは“Street food, plant powered(ストリートフードをプラントベースで楽しむ)”。メニューの中心はバーガーだが、肉や魚はもちろん、大豆ミートなどの代替肉も使わない。ビーツや豆、きのこを合わせたパティ、ブロッコリーのクリスピーバーガー、丸ごとのナスを主役にした一皿など、植物そのものの魅力を生かした料理が並ぶ。
「私たちが目指しているのは、肉のコピーではありません」と話すのは、共同創業者のカネル・ブルヌリエールさん。
「野菜をローストし、グリルし、ソースを添える。肉料理で培われてきた技法を野菜にも用い、そのおいしさを最大限に引き出したいのです」
すべて店内で仕込み、自家製のソースやチーズを組み合わせることで、一皿としての完成度を高めている。目指すのは、ベジタリアンだけのための料理ではなく、誰もが野菜のおいしさを楽しめる一皿だ。
その考え方を伝えるために選んだのが、バーガーだった。
「誰もが知っている料理だからこそ、野菜の魅力を自然に伝えられる」とブルヌリエールさん。共同創業者でシェフのマキシム・リウフさんは、多くの人に親しまれている料理を野菜だけで再構築することで、新しいおいしさを提案したいと考えたという。
一方で、その一皿の裏側には見えにくい手間がある。野菜は丸ごとの状態で仕入れ、一つひとつ下処理を施し、ローストやグリル、揚げるなど複数の工程を経て仕上げる。
「野菜は安いし簡単だと思われがちですが、実際には肉以上に時間と手間がかかることも少なくありません」。だからこそ、メニュー数はあえて絞り込み、限られた品数をすべて自家製で提供している。
マニが提案するのは、肉の代用品ではない。植物の持ち味を引き出すために技法を尽くす料理である。こうした発想は、ガストロノミーだけでなく、ストリートフードにも広がり始めた。植物を「肉の代わり」としてではなく、主役として味わう。その視点は、いまパリの日常の食にも少しずつ根づき始めている。
◎Mannie
32 rue Coquillière 75001 Paris
ランチ12:00~14:30 、ディナー19:00~22:30(ディナーは予約推奨)
日曜休
バーガー:12.90ユーロ
ボウル・プレート:11.50〜14ユーロ
サイドメニュー:4〜7.50ユーロ
デザート:3.50〜5.50ユーロ
https://www.manniegroupe.com/
*1ユーロ=182円(2026年8月)