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JOURNAL / 世界の食トレンド

英国の食品流通システムに変革を!オンライン・ファーマーズ・マーケット

England / London

2025.04.24

英国の食品流通システムに変革を!オンライン・ファーマーズ・マーケット

text by Yuka Hasegawa
カラフルでキュートなイラストを使用したオンライン・ファーマーズ・マーケット「Wylde(ワイルド)」のウェブサイト。顧客からも好評を得ている。

2000年前後、ロンドンをはじめ英国各地で“ファーマーズ・マーケット”が旋風を巻き起こしてから久しい。生産者の顔が見えるトレーサビリティを第一義に、仲介業者を経由しないことでフレキシブルな価格設定を可能にし、地産地消を掲げたサステナブルなスタンスなどが大きく支持され、ファーマーズ・マーケットは、英国人の食文化にしっかり根付いている。

昨今、この独立形食品流通システムの進化形として大きな注目を浴びているのが、オンラインをプラットフォームにしたファーマーズ・マーケット「Wylde(ワイルド)」だ。2023年にスタートし、厳選された小規模な農家、漁師、フォレジャー(野生食材の採集者)、ハンター(猟師)、クラフトビールや英国ワインの醸造家、パン職人など、数多くのアルチザンな生産者と提携したB2Cの宅配サービスを構築している。

「英国にはすばらしい食材がある。しかし、大手のスーパーマーケットが市場で絶大なパワーを擁し、値段設定や取引契約において、不公平な食品流通システムが横行している。同プロジェクトは、コーンウォールから直送される新鮮な魚介類、トウモロコシで飼育されたチキン、森で採取されたばかりのワイルドガーリックを使ったビネガーやソーセージなど、高品質で個性的な英国食材を全国の消費者へ直接届けることがミッション。英国の食品流通システムを根本から変革していきたい」と語るのは、ワイルドの共同創始者、ニック・ジェファーソン氏だ。

ワイルドの創始者でありCEOを務める、ニック・ジェファーソン氏(右)とエラ・クーパー氏
ワイルドの創始者でありCEOを務める、ニック・ジェファーソン氏(右)とエラ・クーパー氏。提携する生産者の数は、創設当初の20社から60社以上と3倍以上に増加しているという。「お客様から“ワイルドの食材が生活を変えてくれた”といったフィードバックを受け取る瞬間が、本当に嬉しくやりがいを感じる時」と、ジェファーソン氏。

在庫を持たないというスケーラブル(拡張、変化に随時適応可能)な形態も、ベンチャービジネスモデルとして話題だ。
「創設から現在まで生産者を精鋭し、信頼できるロジスティックを構築することを目指してきました。目標金額を17万5000ポンドに設定し、先日行ったクラウドファンディングでは、4月7日現在で既に31万ポンド強を調達。今後はスポンサーシップキャンペーンの開始、ソーシャルメディアの活用、ポップアップイベントの開催などを通じて、さらなるブランドの認知拡大を実行していきたい」とジェファーソン氏は熱く語っている。

活きのいい魚介がウェブサイトにアップされると、すぐ完売になることもよくあるそう
ワイルドの厳選された生産者の中で一番人気なのは、南イングランド、デボン州とドーセット州に広がるライム湾で、小型ボートで漁をする親子、マークとジムから直送される魚介類。ロブスターや、高級魚のジョン・ドーリー(マトウダイ)などを含む、活きのいい魚介がウェブサイトにアップされると、すぐ完売になることもよくあるそう。
ライム湾で獲れたロブスター
ライム湾で獲れたロブスター。サステナブルな漁法で、マークさんによって捕獲されたもの。

*1ポンド=186円(2025年4月時点)

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