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JOURNAL / 世界の食トレンド

ワイン大国スペインにも、ノンアルワインの時代到来

Spain [Madrid]

2025.07.17

ワイン大国スペインにも、ノンアルワインの時代到来

text & photographs by Yuki Kobayashi
大手スーパーでは、上から下までノンアルワインという棚も登場。驚きと共に、これが日常になるのに時間はかからないとも感じる。

20年ほど前、ノンアルコールビールが登場し始めた時のスペイン国内の雰囲気は、「気にも留めない」という感じだったように思う。

ドイツに次いで欧州第2位のビール生産国のスペイン。今や国内著名ブランドでノンアルコールビールを生産していないブランドのほうが珍しく、ノンアルカテゴリーの中でも、グルテンフリーやIPA、黒ビール、柑橘の味と香り、ローストの香ばしい「トスタド」など細分化が進む。2014年に国内ビール生産量の5%に過ぎなかったノンアルは、10年後(2024年)には10%と2倍になった。

この潮流がワインにも広がらないわけがない。数年前まで冷めた目で見られていたノンアルワインは、食品見本市では新商品として、様々なブランドが誇るように発表している。

ワイン製造に関わる研究開発においては国内有数の革新を誇るカタルーニャのワイン醸造業者トーレスが、モスカテル種でノンアルコールの白ワイン「Natureo」をマーケットに出したのは約20年前。今では同州のカバの著名ブランド、フレシネ社の「Freixinet 0.0%」(マカベオ種、シャレロ種、パレジャダ種)、リベラ・デ・ドゥエロのボデガ、バルブエナの「WIN TINTO」(赤、テンプラニ-リョ種)、リオハのセニョリオ・デ・ラ・タウティラの「Tautila Rosado」(ロゼ、テンプラニーリョ種)等など、赤・白・ロゼと揃い、ブドウの品種まで選べるようになってきた。

ノンアルワインのラベル
ノンアルの種類によっては、賞味期限が表示されているのも面白い。酸化防止剤や保存剤が含まれることも。

2022年のスペイン農水省の調べでは、モニター対象者の中でノンアルコールワインを試した人は全体の22%、低アルコールワインを試したことがある人は37.7%だという。背景には、パンデミック後に高まった健康志向と、味にダメージを与えないノンアルコールワイン製造の技術が追いついてきたこともあるだろう。

日本同様、スペインでも若者のアルコール摂取量減少の傾向があるゆえ、これからのワイン市場でノンアルコールのカテゴリーが伸びてゆくのは必至と言われている。


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