【食のプロの台所】アパレルの発想でディスプレイ
料理家 口尾麻美
2026.06.11
text by Noriko Horikoshi / photographs by Hiroaki Ishii
連載:食のプロの台所
台所は暮らしの中心を占める大切な場所。使い手の数だけ、台所のありようがあり、その人の知恵と工夫が詰まっています。“旅”がテーマの料理家、口尾麻美さんのアトリエ兼ご自宅を訪ねました。遠い国々の台所の匂いや音、味の記憶が織り込まれた調理道具は、敢えて見せる収納で。
口尾麻美
料理家。アパレル業界から料理の道に。世界の国々を訪れ、旅先でインスパイアされた食と料理を書籍や料理教室などを通して提案する。『トルコのパンと粉ものとスープ』(誠文堂新光社)、『飯麺湯 台湾小吃どんぶりレシピ 食堂、屋台、夜市で食べる小腹メシ。』(グラフィック社)、『旅するキッチン(異国で出合った道具とレシピ)』(家の光協会)ほか著書多数
Instagram:@asamikuchio
(TOP写真)
もとは3DKだったマンションを、キッチン、ダイニング、リビングの仕切りがないワンルームにリフォーム。パリのアパルトマンをイメージしていたが、「だんだん異国テイストが加わって、無国籍風に変わってきたみたい」(笑)。取材当時(2017年)以降も各国に旅を重ね、キッチンは今なお進化中。最新の様子は口尾さんのInstagramにて。
いながらにして旅の空
食の仕事人が旅に出る理由は、さまざまだ。ローカルな食材や酒と出会いに。生産者を訪ねる。あるいは、その土地の料理を学ぶため。“旅”がテーマの料理家、口尾麻美さんの場合はマストの動機がもうひとつ。“雑貨の大人買い”である。「調理道具に器、カゴやファブリック、料理本もどっさり。気になったものは、とりあえず買わないと後悔しそうで」
連れ帰る先は、料理教室のスタジオも兼ねる自宅のダイニングキッチン。モロッコ、トルコ、東欧やアジア、変わったところではコーカサス地方のジョージアからも。約10畳大の空間には遠い国々の台所の匂い、音、味の記憶が織り込まれ、東京のマンションの一室にいることを忘れそうになる。
愛着のあるものばかりだから、しまい込んだりせず、すべては見える場所に。アパレル出身とあって、ディスプレイ好きの血が騒ぐ。であるからこそ、「気に染まないものは絶対に置きません」と、きっぱり。「調味料類も、“イケてない”パッケージのものは別の容器に入れ替えて。でないと、あっという間に所帯じみてしまうから」
いつか再現したいのは、モロッコの村で見たベルベル人の調理場だという。手作りの窯があるだけの、シンプルな土間の風情が忘れられない。夢の台所では、ついつい買い集め、「50個はあるかも」というタジン鍋が、大活躍してくれるに違いない
(雑誌『料理通信』2017年11月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
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