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RECIPE

【食のプロの台所】“終の台所”を見据えた引き算の美学

料理研究家 松田美智子

2026.04.23

text by Noriko Horikoshi / photographs by Hiroaki Ishii

連載:食のプロの台所

台所は暮らしの中心を占める大切な場所。使い手の数だけ、台所のありようがあり、その人の知恵と工夫が詰まっています。真っ白な空間に、無駄をそぎ落とした凛とした佇まい。料理研究家・松田美智子さんのキッチンを訪ねました。


松田美智子
料理研究家。ケータリング、フードプロデュース業での起業を経て、1993年より料理教室を主宰。保存食や調味料、鍋料理まで多岐にわたるレシピを雑誌、書籍、TV等で紹介する。プロデュースするテーブルウェアシリーズ「JIZAI」は美しく機能的な商品が人気。

(TOP写真)
長さ3.5m、奥行1.2mのキッチンカウンターを斜めに配置。リビングと一体の空間がより広く見える。手前の丸テーブルは、アルフレックスに特注。8人が余裕で座れるサイズで、教室にもプライベートディナーにも大活躍。

凛として背筋が伸びる

20年来の仕事場だった恵比寿のスタジオを閉め、2018年に閑静な住宅街に居を移した。自宅と料理教室を兼ねる新しいキッチンは、仕事上の関係も深い家具ブランド、アルフレックス社とセッションを重ねながら、まる2年間をかけて作り上げた。

「自分で考えて作ったキッチンとしては、これが3代目。過去の失敗に学びながら改良を加えて、今もアップデートが続いている“作品”です」

設えのほぼすべてを白で統一したのは、「汚れをすぐに拭けるよう、目立つ色にしたかった」から。以前は好んで実践していた“見せる収納”をやめ、これも真っ白な扉付きの造作棚に。収納する道具や器を絞り込み、この先も大事に使いたいもの以外は思い切りよく処分した。

「これが最後のキッチンかもしれないので」と松田さん。「プライベート中心、自分のしたいこと優先でいこうと。本当に好きなものしか、もう置きたくないし、使わない。そう決めて選んでいます。部材も、家具も、照明も」

一切の無駄をそぎ落とした、シンプルの極みをいく空間の美しさ。ショールームのようにも見えて、決定的に違うのは、無機質と対極をなす凛とした佇まいだ。ぴんと背筋が伸びた人を思わせるような。覚悟と言い換えてもいい。“終の台所”を見据えた引き算の美学が、そこに見える。

独・ミーレ社製のエスプレッソ・マシンはビルトイン式。
カウンターと高さを揃えて作った可動式のワゴン。熱い土鍋も置ける、耐熱性に優れたセラミックストーンを天板に。

◎松田美智子 料理教室
Webサイト:松田美智子 料理教室

(雑誌『料理通信』2018年7月掲載)

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