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JOURNAL / 世界の食トレンド

菜食志向が高まるベトナムで注目のベジタリアンレストラン

Vietnam [Ho Chi Minh]

2025.11.04

菜食志向が高まるベトナムで注目のベジタリアンレストラン

text by Rie Suzuki
ベトナムの家庭料理をイメージしたメニュー。夕食は主菜、副菜、スープ、ご飯という構成が一般的で、大きな皿で提供し、取り分けるスタイル。ご飯を盛った飯用の蓋付き陶器もテーブルに。東南アジアでは珍しく箸を使用する。

近年多くのベジタリアンレストランがオープンしているベトナム。宗教上の理由による菜食文化がある他、毎月旧暦の1日と15日、新月と満月の日を「菜食の日(アンチャイ)」とする習慣が浸透しているのだ。中間層の健康志向の高まりもベジタリアンレストランの人気を後押しし、菜食主義でなくとも定期的に菜食の習慣を持つ人が多い。スタートから2年目となるベトナム版ミシュランガイドでは、2025年、5軒のベジタリアンレストランがビブグルマンを受賞している。

社交やビジネスの場として人気の「ドゥードゥーサン(ĐU ĐỦ XANH)」は、2021年、ホーチミン市内の中心のヘム(路地)に佇む、コロニアル・スタイルの洋館にオープンしたベジタリアンレストラン。店作りのコンセプトは「内側からグリーンを育てよう」。“緑のパパイヤ”を意味する店名は、新鮮さ、活力、成長を象徴する。

フラワータルト
ベトナムでは1年を通してアボカドが豊富に収穫できる。ハスをモチーフにしたフラワータルトは、アボカドヨーグルトムースを敷き詰めて、コクがありながらも軽やかに仕上げている。ザクロ、リンゴをトッピングし、アクセントにコリアンダーとハラペーニョを。
アーティチョークを使ったスープ
中部の避暑地、ダラット産の新鮮なアーティチョークを使ったスープ。アーティチョークとマッシュルームの餃子入り。具材には冬虫夏草(Cordyceps)も使われている。
パンナコッタとコーヒーゼリー
(写真右)ミルクコーヒーのパンナコッタ。コーヒーゼリーの二層仕立て。(写真中央)ジンジャー風味のパンナコッタには、レーズンとジンジャーのコンポートを添えた。

食材は生産者に敬意を払って慎重に選び、栄養価が高いものを新鮮な状態で使用することに心を砕く。プラントベース料理の豊かさを表現すべく、伝統の食文化と現代的なセンスを調和させ、創造性をもって料理に昇華させる。

「建国80周年を迎える今年、ベジタリアン料理はライフスタイルの一つとなり、インクルーシブな社会と平和な生き方へと向かう姿勢と共鳴し、よりモダンに発展していくだろう」と語るのは同店のマネージャー、ブライアン氏。街の喧騒からエスケープしたオアシスのような空間で、食事を通して、他者とのつながり、自分自身とのつながりを考えるきっかけとなってほしいと話す。店には聴覚障害のメンバーも多く在籍する。レストランが様々な世界をつなぐ架け橋となり得ることをお客にあらためて感じさせている。

ドゥードゥーサンのメンバー
マネージャーのブライアン(Bùi Hữu Tâm)氏(右から2番目)をはじめ、皆が目標を共有しチームワークで日々務める。ブライアン氏の前職は料理人で、独自のベジタリアンメニュー作りにも貢献している。
店内の写真
アンティークのランプなどをインテリアのメインに据えた、居心地の良い空間。

ĐU ĐỦ XANH – TIỆM CHAY. VEGETARIAN
☎+84-(0)28-38243877, +84-(0)93-3022626
178A Hai Bà Trưng street, Tân Định ward, Hồ Chí Minh city
https://journeyofthesenses.vn/du-du-xanh

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