人生のクオリティを上げる食べ方を提唱。自然療法士が営むカフェが人気
France [Paris]
2025.10.16

text by Sakurako Uozumi
「生チーズケーキ(Cheesecake Cru)」。カシューナッツクリームの素朴でやさしい味わいを生かしたチーズケーキ。イチゴとルバーブの酸味がさわやかに引き立ち、土台にした甘さ控えめのショートブレッドが懐かしい余韻を添える。photograph by desprezmarie.studio
パリ1区と6区に拠点を構えるカフェ 「ジュディ(JUDY)」。精製糖不使用、グルテンフリー、ラクトースフリーを掲げ、健康意識の高い層から熱い視線を浴びている。創設者のドミニク・ガッサンはオーストラリア出身の自然療法士であり、ビタミンやミネラルなど微量栄養素に基づく食生活を指導するミクロ栄養学の専門家でもある。
彼女が掲げるキーワードは“クオリタリアン(Qualitarian)”。健康を優先するあまり環境への配慮が置き去りにされたり、逆に環境重視が必ずしも体の健やかさにつながらない現状を前に、「食べることは小さなアクションでありながら、自らの体をつくり、かつ社会や環境に影響を及ぼす選択です」と語る。

食材選びだけでなく摂取の仕方にも気を配る彼女の哲学は、皿の上に鮮やかに表れる。例えば、コンニャク麺を使った軽やかな「バンコク・ボウル」、ホウレン草たっぷりの「グリーン・パンケーキ」、果実を贅沢に盛り込んだ「チアシード・プディング」、乳製品不使用の生チョコケーキやチーズケーキなど、栄養学の裏付けとおいしさを両立させた料理が並ぶ。ドリンクも特徴的で、ナチュロパシー(自然療法)の発想を取り入れたラテやスムージー、霊芝(レイシ)をベースにしたビーガン仕様のドリンクなど、心身を整える提案もユニークだ。



ガッサンの料理哲学は家庭での実践に端を発する。「より良く食べること。それは制限ではなく、楽しみを広げることなのです」と彼女は言う。オーガニックで旬の食材を選び、栄養バランスを整え、無理なく体に機能する料理を追求する姿勢が一貫している。
パリでは近年、グルテンや乳糖に不耐性を持つ人々の増加に伴い、対応する店が少しずつ増えている。そうした中でジュディが評価されるのは、単なる制限対応を超えて、食をもっと自由で前向きなものとして提示している点にある。おいしさと健やかさ、そして持続可能性。その三つを同時に追求する姿勢が、多くの人々の共感を集めている。


◎JUDY(右岸1区店)
14 rue Jean-Jacques Rousseau Paris 75001
☎+33.(0)1.42.33.63.83
8:00~17:30(土曜、日曜9:00~18:30)
https://www.judy-paris.com/
*左岸6区店
18 rue Fleurus 75006 Paris
☎+33.(0) 1.43.25.54.14
*1ユーロ=172円(2025年9月時点)
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