大玉需要が減っても愛され続ける「スイカ」
[千葉]未来に届けたい日本の食材 #53
2025.07.31

変わりゆく時代の中で、変わることなく次世代へ伝えたい日本の食材があります。手間を惜しまず、実直に向き合う生産者の手から生まれた個性豊かな食材を、学校法人 服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長、服部幸應さんが案内します。
連載:未来に届けたい日本の食材
スイカがおいしい季節です。核家族化が進み、大玉を丸ごと1個買う家が少なくなりましたが、カットスイカのニーズは年々増えているようです。
全国2位の出荷量を誇る千葉県八街市に、スイカ農家3代目の山下秀則さんを訪ねました。

大きさではなく、つるに付けた赤い印を頼りに収穫
まずはスイカを食べ比べませんか。Aは最高ランク。Cは3番目です。実はこの等級、味だけで決めているわけではないんです。Cはホラ、少しだけヒビが入ってるでしょ。これが等級を下げる原因になる。カットスイカにする時に美しくないからなんですね。
では、畑に行きましょう。スイカは1月1日には種を蒔いて、育苗ハウスで2月20日くらいまで育てて畑に植え替えます。下にはマルチシートを敷いて温めておいてから植え込み、ビニールトンネルのビニールを二重にして大きくします。苗の段階で、接ぎ木をするのが一般的で、台木にはユウガオを用います。
スイカの実に入っているたくさんの種を蒔いたら、誰でもスイカが作れるんじゃないか。そう思われがちですが、あの種は個性がバラバラなため、形はできても均一なクオリティにはなりにくい。種屋さんが食味が良くなるよう、様々に掛け合わせをして完成させた優良品種を、毎年購入して蒔きます。ここ15年は「祭ばやし」という品種に惚れ込んで使っています。味だけでなく食感もいいんです。




スイカはあまり上には伸びず、這うように伸びていきます。栽培方法には整枝(せいし)栽培と放任栽培があるのですが、うちでは、「4本2果どり」という整枝栽培をしています。1本の親づるから生育のいい子づるを4本残し、伸ばしていくのですが、放っておけば隣の畝まで広がるので、人間が引っ張って、自分の畝に戻してやる必要があります。そして根元から数えて15〜22節の間の花を生かし、実をならせます。このあたりが味と大きさのバランスがちょうどいいんです。それより先の節だと、大きくはなるけれど味がのらない。小玉の段階で間引いて、実を二つに絞り、甘味を凝縮させていきます。
4月20 日頃にはミツバチを入れて受粉させます。そして、大きくても小さめでも、受粉後きっちり50 日で収穫します。1日遅いと、もうヒビが入ってますから。八街は砂地で水はけがいいのですが、うちでは畑に勾配をつけて、さらに水はけをよくしています。また土作りの段階で牛糞をしっかり熟成させた有機肥料をバランスよく使い、糖度を上げています。
スイカ=夏休みというイメージですが、このあたりのスイカは梅雨時が一番おいしい。ただ、桜前線のようにスイカ前線があって、真夏には東北や長野、鳥取産が出回るのでご安心を。スイカはメロンと違って、収穫時が食べ頃です。買ったらすぐに食べてくださいね。



◎グリーンやちまた園芸部
千葉県八街市八街へ199-1601
☎043-444-5861
(雑誌『料理通信』2016年8月号掲載)
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