料理人はマヨルカ出身 マドリードの懐石料理店「SEN OMAKASE」の本気度
Spain [Madrid]
2026.01.26
text by Yuki Kobayashi
「セン・オマカセ」シェフのスティーブン・ウー氏。国内のすし職人コンクールでも優勝経験が。
2024年、海外からの投資額が前年比+43%を記録したマドリード州。相次ぐ高級飲食店の開店はその表れかもしれない。中でも24年に開店し、同年にミシュラン一ツ星を獲得した「セン・オマカセ(SEN OMAKASE)」は、別格の空間とサービスで話題だ。
シェフ、スティーブン・ウー氏はマヨルカ出身で中国人の両親を持つ。パンプローナに育ち、情報エンジニアの学位を修めながらも料理の道へ。1762年創業の京都の老舗「魚三楼」で修業を重ねるうちに、料理技術だけでなく、一つひとつの規律や所作を学び、懐石料理は料理様式を超えた哲学だと理解したという。そのうえで、店を開くにあたっては、スペイン人の好みと懐石の流儀のバランスに注意を払った。
デグスタシオンコースは全33品(220ユーロ)。12席のみの店内は、1室目であるレセプションから始まる。ガラス越しに見えるワインセラーに期待を寄せつつ、まずは数品の前菜を。
部屋を変えて、カウンター席のみの2室目へ。ここでは、シェフの包丁さばきを見ながら、握りずしや焼き物、煮もの、酢の物などを楽しむ。京都に学んだ醤油に頼らない塩味使いも、シェフのこだわるところ。日本から直送される魚介類を惜しみなく使い、仕入れが許せば日本とガリシアの「ウニの食べ比べ」などという贅沢も実現する。
デザートは3室目の空間に移動して、裏千家のお点前による薄茶と一緒に。正座をせずに済むよう客には掘りごたつが用意され、畳の上で着物姿の女性がお茶を点てる様子に、満腹になってもなお好奇心をそそられる。
スペイン育ちのシェフゆえ、顧客がそれだけで満足して終わることはないことも熟知している。デザートの後の4室目はカクテルバーになっており、リキュール、日本のウイスキー、また日本茶をはじめとしたお茶のバラエティも豊富に揃えた。
マドリード市内の閑静な住宅街に近い、広さ400㎡の路面店。普段は賑やかに食事をするスペイン人たちも、自ずとおしとやかに振る舞ってしまいそうだ。
◎SEN OMAKASE
https://senomakase.com/