夢心地になる風味と食感「杏仁豆腐」
スローレシピ
2025.07.14

text by Eiko Hirata / photographs by Jun Kozai
連載:スローレシピ
材料をイチから用意し、時間をかけて、料理すること自体をゆっくりと楽しむ。それが“スローなレシピ”。時短とは真逆の価値観の先に、とびきりの味が待っています。今回は、2種類の杏仁を使って作る「杏仁豆腐」です。夢心地になる風味と食感をお楽しみください。
目次
教えてくれた人:京都・岡崎「京、静華」宮本静夫さん

静岡・浜松で創作中国料理店「静華」を営んだ後、55歳で店を閉じ、北京の料理学校に1年留学。京都に08年、現店開店。2019年の大規模改装を経て、翌年ミシュラン一ツ星を獲得。
一瞬にして口溶けた後、広がる風味
中国の古い文献を紐解き、季節の食材を生かした洗練された中国料理を供する「京、静華」。季節替わりのコースの中にあって、唯一不動の存在が杏仁豆腐だ。「いろいろな料理を味わった後には、喉ごしが良く、味覚をニュートラルにするデザートがベスト」と宮本静夫さん。
ワインクーラーで冷やしながらテーブルに運ばれ、お客の前でサーブされる。舌触りはつるんとして、そのまま口の中で消えていく。寒天とゼラチンを組み合わせて使うことで、この一瞬の食感を生み出している。
形が消えた後にはすぐさま、杏仁の上品な甘味と苦味、牛乳のピュアな風味が順々にふわりと広がる。牛乳は脂肪分の高すぎないものを選び、生クリームの量は控えめにすることで、杏仁ミルクの上品な風味を引き出しながら、奥行きのある味に仕上げる。
「杏仁のミルクは中国では伝統的な食材ですが、牛乳や豆乳など他の素材との組み合わせ次第で風味が変化する、新しい可能性も感じられる食材だと思います」
「杏仁豆腐」の材料と作り方

[材料](10人分)
杏仁(南杏)・・・100g(一晩水に浸す)
杏仁(北杏)・・・25g(一晩水に浸す)
牛乳・・・1L
エバミルク(無糖練乳)・・・200ml
生クリーム・・・10ml
水・・・0.9L
糸寒天・・・6.5g(1晩水に浸す)
グラニュー糖・・・200g
粉ゼラチン・・・6.5g(水でふやかす)
アマレット(フランベしてアルコールを飛ばす)・・・25ml
<シロップ>
鍋に水1.5Lと氷砂糖190gを入れて沸かし、氷砂糖が溶けるまで中火で熱する。クエン酸少量を溶かし入れ、冷やす。
[作り方]
[1]杏仁を茹でこぼす
1晩水に浸した杏仁を新しい水で一度茹でこぼす。
[2]撹拌して漉す

1と牛乳をミキサーで約20秒攪拌して、晒しで漉して、しっかり汁を絞り出す。【POINT】杏仁と牛乳を一緒に撹拌することで、杏仁のエキスを牛乳に移す。
[3]乳と合わせる
ボウルに2、エバミルク、生クリームを入れ、湯煎で60℃に温める。
[4]寒天と砂糖を煮溶かす

鍋で水0.9Lを沸かし、水気を絞った糸寒天を煮溶かす。火を止め、グラニュー糖を加え溶かす。
[5]粉ゼラチンを加える
4を80℃以下に冷まし、粉ゼラチンを加え溶かす。【POINT】寒天とゼラチンを併用してふるふるの食感に。
[6]すべて混ぜて漉す

温かいうちに3と5、アマレットを混ぜ合わせ、ザルで漉す。
[7]冷ます

器に注ぎ入れ、氷に当てて急冷する。全体が冷えたら冷蔵庫で冷やし固める。
[8]シロップを注ぐ
冷やした器にシロップを注ぎ、杏仁豆腐を掬い取って入れる。

ミルクを突き詰めたデザートの逸品。甘味、ほのかな苦味、テクスチャーなどあらゆる要素が洗練の極み。
(雑誌『料理通信』2017年8月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
京都・岡崎「京、静華」の店舗情報
◎京、静華
京都府京都市左京区岡崎円勝寺町36-3 2F
☎075-752-8521
18:00一斉スタート
月曜、火曜休、不定休あり
京都市営地下鉄東西線東山駅より徒歩6分
http://kyoseika.com/
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
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