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JOURNAL / 世界の食トレンド

ベルリンで人気再燃!レトロな居酒屋“クナイペ”文化の再興

Germany [Berlin]

2026.01.29

ベルリンで人気再燃!レトロな居酒屋“クナイペ”文化の再興

text by Hideko Kawachi
ベルリンの居酒屋名物、「ゼンフアイアー(マスタードソース漬けの茹で卵)」もメニューに。

ドイツ人の第2の居間とも言われる「クナイペ(居酒屋)」。何十年と続く店も多く、地元の人の交流の場でもあるが、パンデミック後には大量閉店の波が起こり、その数は4分の1に減少、存続が危ぶまれる。しかしベルリンでは、近年、古くからある居酒屋が若い世代に引き継がれるケースがちらほらと現れ、注目を浴びているのだ。

「クナイペはベルリンの街の一部。文化・芸術にも欠かせない存在」と語るのは、ベルリンで最も若い居酒屋経営者とも言われるピンテンダリさん。弱冠 19歳で、母が経営していた店を引き継いだ。特に西ベルリンでは、クナイペはサブカルチャーの拠点としても知られ、今も独特の雰囲気に惹かれる若者は後を経たない。朗読会や、ボードゲームの会も各地で開催されている。

店内のビリヤード台
クナイペには欠かせないビリヤード台。手前のテーブルはビール樽をリユースしたもの。

2025年、50年以上の歴史に幕を下ろそうとしていたクナイペ「トレーゼン=トレフ(Tresen-Treff)」は、1年ほど前に若いシェフたちに受け継がれ、連日満席の人気となっている。

ミシュラン星付きレストランで学び、腕を振るっていた料理人ヨシャとローレンス、イベントオーガナイザーのユリア。主にケータリングで活動していた3人は、大きなキッチンを探していて偶然この店を発見した。

シェフとスタッフ
右から、シェフのローレンス・フリードル、イベントオーガナイザーのユリア・ベンツィエン、ヨシャ・カールボルグ。「キッチン・フリークス・ベルリン」の名前で独立し、ケータリングやサパークラブを開催していた。

使い込まれた木の家具に、ビールメーカーのホーロー看板、テーブルサッカーの試合が流れる大きなモニター。壁や天井はタバコで飴色になっているが、10年以上前から店内禁煙にしていたのが功を奏し、キッチンから漂うおいしそうな料理の匂いを邪魔するものはない。

店のメニューには、骨付きの豚足を塩漬けにして煮込む「アイスバイン」や、仔牛の肉団子「ケーニヒスベルガー・クロプセ」、残り物の端肉を使った節約料理「ベアムテンシュティッペ(公務員のひたし料理)」など、ベルリンの郷土料理が、1品8ユーロ前後というお手頃価格で並ぶ。小ぶりの皿で盛り付けは洗練されているが、塩が効いた味でビールのつまみに最高だ。

アイスバイン
ベルリン名物の茹で塩漬け肉の「アイスバイン」は骨と皮を取り、肉をほぐしてマスタードを添えて。ほろほろでビールが進む味わい。8ユーロ。
ベアムテンシュティッペ
「ベアムテンシュティッペ」は合い挽き肉を肉汁で煮込み、マッシュポテトなどを添えて食べる。8ユーロ。

「嬉しかったのは、昔からの常連客も変わらずに足を運んでくれていること。こんな素敵な料理がこの店のカウンターに並ぶとはね!って最初は驚いていたけれどね」とローレンスは笑う。前オーナーも引退はしたが、よく顔を出す。カウンターには彼のために毎日予約のプレートが置かれている。

パーティシーズンは毎日のように大口の予約が入るが、ふらりと来るお客のために店の半分は必ず空けるようにしているそうだ。セレブリティが誕生日を祝う横で、常連が仕事終わりの一杯を飲む。ベルリンのクナイペ文化の灯はまだ消えていないようだ。

店内のカウンター
店名のトレーゼンとは居酒屋のカウンターを指す言葉。トレフは出会い。その名の通り、毎晩カウンターでは常連客と新顔が集う。

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