異文化の味が重なるタイのカレー「エビのパッポンカリー(エビと卵のカレー炒め)」
ブルーフード・レシピ:タイ料理研究家 長澤恵さん
2025.06.19

photographs by Hide Urabe
連載:ブルーフード・レシピ
海に囲まれ、豊かな漁場を有する日本には魚食文化が根付いています。魚を食べるなかで培われ、受け継がれてきた知恵や知識を継承し、上手に食べることは、多様性豊かな海の保全につながります。日本周辺でとれる水産物(ブルーフード*)の魅力を再発見するレシピを人気店のシェフに教わります。今回は、中国×インド×タイの味が重なった「エビのパッポンカリー(エビと卵のカレー炒め)」です。甘辛いソースと卵のコクでご飯が止まりません。
*ブルーフードとは、淡水・海洋環境に由来する植物、動物、藻類など水生生物性食品のこと。食料危機や気候変動などの課題に対応し、健康的で持続可能な食料システム構築への貢献が期待されている。
**日本の海面漁業の漁獲量ランキング(漁獲量/前年比)【農林水産省:令和5年漁業・養殖業生産統計】
全体(282万3,400t/-4.3%):1位マイワシ(68万900t/+6.1%)、2位ホタテガイ(33万600t/-2.8%)、3位サバ類(26万1,100t/-18.3%)、4位カツオ(15万2,600t/-20.0%)、5位スケトウダラ(12万2,900t/-23.4%)、6位カタクチイワシ(11万4,000t/-7.3%)、7位マアジ(9万2,000t/-7.0%)、8位ブリ類(8万1,000t/-12.9%)、9位サケ類(6万t/-31.8%)、10位マダラ(5万4,000t/-6.9%)
目次
教えてくれた人:タイ料理研究家 長澤恵さん

通称May。2002年よりタイ料理研究家として活動を始める。2010年に東京・錦糸町にて「タイ料理教室ティッチャイタイフード」を立ち上げる。月に20回以上のレッスンを開催し、現在までの生徒数は延べ35,000人以上。また、現地の食に特化したタイツアーを年に数回開催し、食文化への造詣を深めている。企業や飲食店の商品・メニュー開発、メディア出演、食文化セミナーなどタイに関わる多方面で精力的に活動中。YouTubeチャンネル『日本人のメイです』2023年1月スタート。タイ料理の魅力をタイ語で発信中。
混ぜ過ぎない。ランダムがおいしさのカギ
タイには、中国からインドを経由して伝わった“タイ中国料理”なるジャンルがあります。空芯菜炒めや白身魚の醤油蒸し、エビと春雨の煮物などの中国の代表的な料理を、タイの大豆調味料、シーズニングソースやシーユーカオ、ハーブなどでタイ風に味付けされたものです。主にレストランで人気の料理です。
「パッポンカリー」もその一つ。中国の卵炒めにインドのカレーの要素が加わり、さらにタイ風の甘辛い味わいをプラスします。ピリッと甘辛くコクのあるソースにとろとろ卵の優しい旨味が加わると、もうご飯はとまりません。
ポイントは、エビのプリプリ感と卵のとろとろ感。エビは調理前に必ず片栗粉と塩と水で、揉み洗いをします。これを水で洗い流すと、臭みが取れ、すっきり透き通った白身が現れます。さらに水分はきっちりと拭くこと。
次に、とろとろ卵のためには、食材を混ぜすぎないことがコツです。卵は切るように軽く溶き、加熱はヘラでゆっくりと大きな円を描きながら火入れします。あえてランダムにすることで食材と絡みのよい、程良い食感を出します。仕上げのシーズニングオイルも、加えた後は色ムラが残るくらいでOK。
最後に、調理に使うオイスターソースはタイのものです。中国産より塩味が少なく甘味が強い。よりタイらしい味付けになります。アジア食材店、またはネットで、是非手に入れてみてください。
「魚仕事」の極意
1.エビは調理前に掃除し、透明感のある白身に

エビは片栗粉と塩と水で、しっかりもみ洗いをする。片栗粉で汚れを落とし、塩でエビの臭みもとれて透き通った透明感のある身に。
2.エビの水気はしっかり拭き取る

エビに水分が残っていると、炒める際に食感が悪くなる。ぷりぷり食感のためにしっかりキッチンペーパーで水分を拭き取る。
3.エビの最初の火入れは“さっと”40秒

エビは後にも火を通すので、1度目は火を通しすぎない。大きめのエビなら、強火で40秒程が目安。
「エビのパッポンカリー」材料と作り方
[材料](4人分)
エビ・・・8尾
Aタマネギ・・・1/4個
セロリ・・・1/2本
赤ピーマン・・・1/2 個
青ネギ・・・2本
ニンニク・・・2片
カレー粉・・・小さじ2
B鶏がらスープ・・・200ml
エバミルク・・・100ml
シーユーカオ・・・大さじ1
オイスターソース・・・小さじ2
砂糖・・・大さじ1
卵・・・2個
シーズニングオイル・・・適量
水溶き片栗粉(片栗粉1:水1)・・・大さじ1
セロリの葉・・・適量
ご飯(長粒米)*・・・適宜
*ご飯の炊き方・・・米をたっぷりの水で力を入れずに手のひらで優しくこすり洗い(拝み洗い)をする。4回ほど水を替え、これを繰り返す。米と同量の水を合わせて炊飯器の早炊き機能で炊く。

唐辛子や干しエビを油で揚げたペースト状の調味料、チリオイルの油分がシーズニングオイル。ない場合はチリオイルの上に浮いた油だけをすくって、使ってもよい。エビの旨味をさらに重ねて香ばしさをプラスする、この料理には欠かせない調味料。
[作り方]
[1]エビの下処理をする
![[1]エビの下処理をする](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/06/bluefood_recipe_14_megumi_nagasawa_07.jpg)
エビの殻を剥き、背開きにして背ワタを取り、水で洗う。尻尾は先を斜めに切り落とす。
[2]エビの臭みを取る
![[2]エビの臭みを取る](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/06/bluefood_recipe_14_megumi_nagasawa_08.jpg)
エビを塩小さじ1、片栗粉大さじ1、水50ml(分量外)で揉む。泡立ったら、水で洗い、拭く。
[3]野菜を同じ大きさに切る
![[3]野菜を同じ大きさに切る](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/06/bluefood_recipe_14_megumi_nagasawa_09.jpg)
タマネギは1枚ずつはがし、3㎝幅の乱切りにし、セロリ、赤ピーマン、青ネギも同じ大きさに切り揃える。
[4]ニンニクをみじん切りにする
![[4]ニンニクをみじん切りにする](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/06/bluefood_recipe_14_megumi_nagasawa_10.jpg)
ニンニクは潰し、粗めのみじん切りにする。
[5]卵と油を混ぜる
![[5]卵と油を混ぜる](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/06/bluefood_recipe_14_megumi_nagasawa_11.jpg)
卵にシーズニングオイル大さじ3を加え、菜箸で卵白を切るように軽く溶く。
[6]エビを軽く炒める
![[6]エビを軽く炒める](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/06/bluefood_recipe_14_megumi_nagasawa_12.jpg)
中華鍋にシーズニングオイル大さじ1を引いて熱し、エビを加えて強火で炒める。【POINT】軽く色がついたらすぐに取り出す。
[7]調味料を煮立て、野菜を加える
![[7]調味料を煮立て、野菜を加える](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/06/bluefood_recipe_14_megumi_nagasawa_13.jpg)
シーズニングオイル大さじ1.5でニンニク、カレー粉を炒め、泡立ったら、Bを加えひと煮立ちさせ、Aを加える。
[8]とろみをつけ、卵とエビを加える
![[8]とろみをつけ、卵とエビを加える](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/06/bluefood_recipe_14_megumi_nagasawa_14.jpg)
野菜に軽く火が通ったら、水溶き片栗粉でとろみを付ける。エビ、卵を順に加え、ヘラでゆっくりかき混ぜる。
[9]油を回しかけ、仕上げる
![[9]油を回しかけ、仕上げる](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/06/bluefood_recipe_14_megumi_nagasawa_15.jpg)
シーズニングオイルを回しかけ、青ネギを加えて器に盛る。セロリの葉を飾る。

ぷりぷり食感のエビをピリ辛な味付けと、とろとろ卵が優しく包む。魚介の旨味と唐辛子が効いたシーズニングオイルをたっぷり使うのがコツ。粘りが出ない長粒米と一緒に。
◎タイ料理教室 ティッチャイタイフード
https://www.titcaithaifood.com/
(雑誌『料理通信』2016年7月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
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