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世界No.1レストランの技術が東京に上陸。SOSAが切り拓くスペイン発ガストロノミーの新境地

2025.05.01

photographs by Masahiro Goda

2025年3月12-13日、東京・市ヶ谷のスペイン料理店「Tinc Gana(ティンガナ)」にて、ヴァローナ セレクションのひとつである、スペインの機能素材ブランド「SOSA(ソーサ)」と、ミシュラン三ツ星、2024年ワールドベスト50レストランで1位を獲得したバルセロナのレストラン「Disfrutar(ディスフルタール)」がコラボレーションするディナーイベントが開催されました。

1967年にカタルーニャで創業したソーサは、2000年、料理革命を起こしたエル・ブジ(2011年閉店)のフェラン・アドリア氏の意見を元に、現在ではソーサのメインカテゴリーになっているテクスチャー製品の開発を本格化。以来、世界80カ国以上でプロフェッショナルのニーズと探求心を満たす機能素材を生み出しています。

今回披露された、ソーサと世界のトップシェフが開発した最先端ガストロノミー技術のプレゼンテーションは、日本を拠点とする実力派の料理人やパティシエにとって、エル・ブジが牽引したガストロノミーの進化を体感できる貴重な機会となりました。

 

「ディスフルタール」オリオール・カストロ シェフ(左)、ソーサ本社のエデュアルド・アフアサ シェフ(右)

答えはすべてカタルーニャにある

料理の物理的・化学的プロセスを分析し、活用する調理技術は、Molecular Gastronomy(分子ガストロノミー)と呼ばれますが、「この呼び名はあまり好きではありません」とオリオールシェフ。ディスフルタールの料理はカタルーニャの自然・文化なくしては語れないという前提を力強く提唱します。

素材のもつ機能と対峙する。ともすればエキセントリックで、自然や歴史的文化とかけ離れた存在に位置づけられる調理技術は、カタルーニャの街、文化、生産業、企業、そしてアカデミックな研究に至るすべての事象と決して切り離せるものではない。だからこそ、「すべてに敬意を持つことです」とシェフは言います。

地域の文脈を理解せずして、技術は本当の意味で活かされない。シェフにとっての調理技術は、創意を尽くす研究であると同時に、自然からの賜りもの。それゆえ調理の知識や技術は世界中の料理人たちの共有財産であると考えているのです。

この未知なる素材への探求は、この先20年を見据えています。ソーサの製品開発はガストロノミーシェフからの様々なフィードバックを繰り返し取り入れながらスパイラル上に発展を遂げてきました。技術は常に現在進行形。この日披露された調理技術のいくつかはエル・ブジ時代(1990〜2000年代)の発見から進化した形です。ひとつの技術をあらゆる方向から観察し、次の可能性にトライすることで、まだ見ぬ素材の在り方を探し続けています。

SOSAイヌリンHOTを使用した油を使わないパイ生地/「トリュフ・ピザ Truffe Pizza 」チコリ由来の食物繊維から生まれた、油脂分の代替としてクリーミーな食感を与えることができる「イヌリン HOT」と生クリームを合わせたクリームをオブラートに塗り、8~9層に重ねて焼くことで、小麦もバターも使わずにパイ生地のような非常にもろい層を生み出す。
SOSAマルトセックを使用したほどける新食感の伝統菓子/「トマトのポルヴォロン&キャビア Tomato Polvoron with Arbequina Caviaroli」タピオカ由来のマルトデキストリン「マルトセック」を使った新しい食感の伝統菓子。マルトセックとトマトパウダー、油を合わせてこねて型で抜く。マルトセックの油を吸収させる機能を使って、口の中でほどけるような儚い食感に。スペインを代表するオリーブの品種、アルベキーナのオリーブオイルで作ったキャビアをのせて。
SOSAジェルエスペッサ、ブラックスファイバーを使用し、液体をゼリー状の膜に包まれた球体に。そして連結/「トウモロコシとフォアグラの多球状タルト Corn Multiesferification Whit Foie」ソースなどの液体をキャビアのようなゼリー状の膜で包んだ球体にするスフェリフィケーション技術の進化形。2004年に開発された技術を、ソーサ製品の増粘剤「ジェルエスペッサ」と「フラックスファイバー」を使って粒同士を連結させ、トウモロコシや真珠の首飾りのようなデザインを可能に。

創造性を引き出すアプローチ「コンセプトシート」

ディスフルタールの客席には、最初にメニュー表ではなく、コンセプト表が配られます。
「フロアでは料理の説明はできても、その背後にある私たちの情熱まで説明できません。表はそれらを喚起していただくためのツールです」とオリオールシェフ。

作り手の料理の背景にある様々な物語を、表を見ながら感じ取る。描かれた補助線は、経験、思い出、イノベーション、遊び、感情、技術、価値観・・・、目に見えぬもの、しかし確かに存在するそれらを見出すトレーニングを重ねることが、食べ手の創造性を高めることにも繋がります。

最後にオリオールシェフは、「ソーサとの探求は、単なる食材の補助にとどまらず、シェフの創造力を解き放つ鍵です。その先に広がる未知の味わいが、私たちの食体験も進化させ、これからの食の世界をさらに豊かにしていくに違いありません」と締めくくりました。


◎ヴァローナ ジャポン
info.tokyo@valrhona-selection.com
https://www.valrhona.com/jp/

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