サバイバルレシピ04 香川【しょうゆ豆】
水戻し&煮込み要らず 豆料理の時短テクニック
2021.08.19
 
                    text and photographs by Ayuko Shibazaki
連載:サバイバルレシピ
          ⾷糧難、災害時をどう乗り越える?
          
          
          人口爆発による食糧難や自然災害で、これまで当たり前にあった食物が手に入らなくなったとき、求められるのは限られた資源でサバイブする「生きる力」です。日本各地に残る保存食、発酵食、郷土食に、自然の恵みを無駄なく食べつなぐためのサバイバル・テクニックを探ります。
        
目次
水不足から生まれた特産品
        香川県は温暖な気候で晴れの日が多く、気象災害が少ない地域。反面、降水量が少なく昔から水不足に悩まされてきた。そのため、米の裏作として小麦などの畑作が盛んになり、うどん文化が生まれた。少雨を逆手に取った塩づくりが隆盛し、江戸時代には日本一の生産量を誇った。麦、塩を原料とする醤油造りは400年以上の歴史を持つ。
        
        
        水不足と上手に付き合ってきた香川県の人々の暮らしの知恵から生まれ、食べつながれてきた料理のひとつが「しょうゆ豆」である。やはり、米の裏作として栽培されるうちに香川の特産野菜になったソラマメを醤油に漬けて作る、家庭の常備食だ。
        
        
        ソラマメの旬は短く、鮮度も落ちやすい。農家では生で食べきれない分を乾燥させて保存してきた。それを翌年の種に使った後は貯蔵し、年間を通して大切に食べていた。乾燥ソラマメをほうろくで煎って醤油に漬けて作るしょうゆ豆は、農繁期の常備菜だったそうだ。豆を煎るひと手間で、煮豆を作るときのように戻す時間がかからず、長時間煮込む必要もない。水をたくさん使えない状況でも役立つ、知っておきたいテクニックだ。
      
 
      5月に訪れたソラマメ畑。天に向かって成長していたさやが下にたれると収穫どき。春に旬を迎えた生のソラマメは、瀬戸内海へ産卵のため入ってきた鰆と「讃岐押し抜き寿司」にしたり、鰆の卵(真子)と合わせて炊いたり、香川県では春の食卓を彩る食材だ。
旬の味を保存する 乾燥ソラマメの作り方
        ソラマメのさやをザルや新聞紙の上に並べて2〜3日天日干しにする(さやが真っ黒になってから収穫する方法もある)。さやが黒くなって、カラカラに乾いたら豆を取り出し、さらに2〜3日天日干しにする。豆に熱湯をかけてさらに2〜3日天日干しにし、密閉容器で保存すると、虫がつきにくい乾燥ソラマメになる。冷暗所で3年ほど、冷凍で5年ほど保存できる。
        
        
        ソラマメは食物繊維、糖質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が豊富に含まれることから、昔は煎った乾燥ソラマメを子どものおやつにしていたそうだ。
      
 
      (写真左)乾燥ソラマメ。(写真右) 右から、茹で新豆、乾燥後1年、乾燥後2年。
煮込まない豆料理 「しょうゆ豆」の作り方
        香川県の郷土食を長年に渡り研究し、次世代に伝える活動をしている郷土料理研究家の十川時子(そがわときこ)先生にしょうゆ豆の作り方を教えていただいた。
        
          【動画もチェック!】
        
        
        
        「煮豆と違い、戻したり、大量の水で下茹でしたり、アク抜きする時間が不要です。基本の材料は乾燥ソラマメ、砂糖、醤油、みりん、保存性を高めるために唐辛子を加えます。ポイントを押さえればシンプルな調理法なので、誰でも作れるレシピですよ」
      
 
      しょうゆ豆は、四国巡礼のお遍路さんがお接待でもらったソラマメをほうろくで煎ったところ、はじけて近くにあった醤油壺に入ったのがはじまり、という説があるそうだ。
 
      
        1.ソラマメを煎る
        
        乾燥ソラマメ200gは洗ってゴミを取り除く。フライパン(テフロン加工)にソラマメを入れて弱火にかける。香ばしい香りが出て、表面に焼き色がつき、中心部に火が通るまで混ぜながら30分程度、気長に煎る。
        
        
        2.調味液をつくる
        
        ソラマメに焼き色がついた頃合いで、小鍋に調味液の材料(水300ml、砂糖140g、みりん30ml、濃口醤油60ml、鷹の爪1本)を入れて、煮立たせる。
        
        POINT:重曹小さじ1を加えると皮がやわらかく仕上がる。
        
      
 
      
        3.豆を漬けて一晩おく
        
        ふつふつ沸いたところへ1の煎った熱々のソラマメを加え、蓋をして一晩おく。翌日、豆が硬ければ好みの硬さになるまで煮てもよい。
        
        POINT:夏場は粗熱が取れたら冷蔵庫に入れて保存する
        
      
 
      
        噛み応えのある皮にほろっと砕ける食感が独特の味わいだ。家庭で作れば、甘じょっぱさ、食感を自分好みにできる。ソラマメに限らず、ピーナッツや大豆など他の豆でも代用できる。
        
        
        <保存方法>
        
        「現代では、文明の利器を活用してしょうゆ豆をより長く保存できますよ!」と十川先生。手間のかかる煎る調理はまとめて。調味液ごと冷凍し、食べたいときに少しずつ解凍すれば、1年を通して楽しむことができる。しょうゆ豆は冷暗所でも日持ちするが、冷凍保存がおすすめ。保存期間は1年程度。
        
      
【動画をcheck!】しょうゆ豆の作り方
 
      
        <先人の道具>
        
        しょうゆ豆は、かつてはほうろくを使って各家庭で作られていた。ほうろくは平たく浅い素焼きの土鍋で、食品を煎ったり、蒸し焼きにするときに使う。硬い乾燥ソラマメを煎るには最適の道具。
        
      
        <しょうゆ豆を買える場所>
        
        香川県内のスーパー、土産店などで購入できる。
        
        
        ◎山清(香川県産ソラマメ使用 しょうゆ豆)
        
        香川県綾歌郡綾川町山田下3465-3
        
        ☎087-878-2121
        
        
          http://shop.yamasei.jp/shopdetail/009006000001/
        
        
        
        ◎有限会社 黒川加工食品(ピーちゃん豆:ピーナッツしょうゆ豆)
        
        香川県高松市出作町428-2
        
        ☎087-889-0367
        
        
          https://www.kurokawashoyumame.com/
        
        
      
          柴﨑杏由子(しばざき・あゆこ)
          
          高知県出身、香川県在住の管理栄養士で、香川県のデザイン制作会社tao.の食企画担当。食を生み出す1次産業に携わる人、地域の食材とそのおいしい食べ方、地域の食文化、地産地消の良さなど、食にまつわる情報をトータルで発信・提案するIKUNAS fのスタッフ。
          
          
          ◎IKUNAS-FLAVOR OF LIFE
          
          香川県・高松市のデザイン制作会社tao.が年2回 (3・9月20日) 発行する四国のモノ・コト・ヒトを取り上げたライフタイル誌。香川県の伝統工芸品、産業をはじめとするものづくりや郷土食など毎日の生活にフレーバーを届ける内容を紹介。
          
          
          
            https://www.ikunas.com/
          
          
          
            Instagram:@ikunas_ (四国の商品情報)
          
          
          
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