くず野菜が味わい豊かな食材に。漬け汁を育てて楽しむ「野菜の塩水漬け」
レスキューレシピ【発酵編】
2026.04.02
photographs by Kiyu Kobayashi
連載:レスキューレシピ
日本の食品ロス量は年間464万トン*と言われています。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための活用レシピをシェフに教わる連載「レスキューレシピ」。今月は、発酵の力を借りておいしく食べ切る知恵を紹介します。1回目は「野菜の塩水漬け」。くず野菜が身体にもおいしい逸品の具材に生まれ変わります。
*農林水産省「食品ロス量(2023年度推計値)」(前年度比-8万トン)」
目次
- ■教えてくれた人:東京・代々木上原「按田餃子」按田優子さん
- ■毎日の仕込みの延長に生まれる「普通に旨い」もの
- ■「野菜の塩水漬け(泡菜)」の材料と作り方
- ■展開例:泡菜乾麺(パオツァイガンミェン)
- ■東京・代々木上原「按田餃子」の店舗情報
教えてくれた人:東京・代々木上原「按田餃子」按田優子さん
「按田餃子」店主、料理家、菓子・保存食研究家。「按田餃子」を東京・代々木上原で2店舗と製造直売所を三浦半島で営む。食品加工専門家としてJICAのプロジェクトに参加し、ペルーのアマゾンを6回訪問。カメラマン・鈴木陽介氏らと2012年現店開店。著書に『食べつなぐレシピ』(家の光協会)、『たすかる料理』(リトルモア)、『冷蔵庫いらずのレシピ』(ワニブックス)などがある。
毎日の仕込みの延長に生まれる「普通に旨い」もの
二十代で独り暮らしを始めた頃、余った野菜の切れ端がもったいないので、味噌に漬けたり、塩もみして常温で保存していました。数日経って発酵が進んだ漬物には、程よく酸っぱく毎日食べても飽きない「普通の旨さ」があって、この味が自分に調度良かった。
ある日、漬物の専門書を読んでいたら、中国の「泡菜(パオツァイ)」という、塩水に漬けるだけの漬物を知りました。簡単だし、使い込まれた素朴な専用の壺も可愛い。中国を旅して壺を手に入れ、泡菜を作り始めました。そして今、泡菜の切れの良い酸味やじわっと感じる旨味は、店になくてはならない味です。
泡菜の材料は、捨てられがちな野菜の余り。ダイコンの頭やニンジンのへた、キュウリの皮、夏ならスイカの皮といった余りの部分をポンポンと壺に放り込みます。壺の中には発酵を促す塩水が入っていて、店では餃子用のキャベツの塩もみの絞り汁を都度加え、塩を足して塩分濃度を整えます。家庭では大根おろしの絞り汁で代用できますよ。
ひと晩漬けて、酸味と旨味を蓄えたら取り出し、刻んで他の具と麺の上にのせたり、ご飯に混ぜて料理に使う。これを毎日繰り返します。泡菜作りは、ほとんど仕込みの延長です。一見野菜の墓場のような壺から、毎日宝のような味が生まれるのが面白い。食材を無駄なく使いきる、合理的なシステムでもあります。
きっと人と発酵の関係は、本来はもっとずっとさり気ない、毎日の台所作業の一部分だったのではないか。食材をなんとかうまく保存したいと思う気持ちが、発酵の力に助けられて、それを可能にしてきたのではないか。発酵を探っていると、人と食材との関わり合いの、根源的な部分を思い起こさせられます。
<発酵に役立つ道具>
1.漬け物用の壺
中国東北部のチチハルを旅した時、本で見たのと同じ漬物壺を見つけたので大事に持ち帰った。野菜を入れる口の周りのくぼみに水を張って蓋をかぶせ、中が空気に触れない仕組み。
2.密閉ガラス瓶
自宅で少量の野菜を漬けるときは、容器の蓋に注意。スクリューキャップの蓋だと、開けるときに、発酵して中で溜まったガスが噴き出てしまうことも。密閉できるガラス瓶が安心。
「野菜の塩水漬け(泡菜)」の材料と作り方
[材料](作りやすい分量)
大根おろしの絞り汁・・・70g
塩・・・適量(水分の2%分)
くず野菜(ダイコンやニンジンのヘタ、カリフラワーの茎や葉など)・・・70g
(水分と同量を目安に)
[作り方]
[1]ダイコンの汁を活用
大根おろしの絞り汁をとりおく。瓶に注ぎ、スケールを使って分量をはかる。
[2]塩を加える
水分の2%の塩を加える。
[3]くず野菜を加える
水分と同量のくず野菜を加える。レーズン、梨、リンゴを加えると発酵が早まる。
[4]常温で発酵(25℃で3~4日)
瓶の蓋をして軽くふる。常温に置き、一日1回程度ふって、野菜が水に浸かるようにする。3~4日で発酵する。
[5]出るたびに足してよい
大根おろしの絞り汁やくず野菜が出るたびに4に足す。2の要領で塩と野菜を足す。
[6]保存する
温度変化の少ない冷暗所で半年は保存できる。大きな容器に移し替えてもよい。
ダイコンの頭やニンジンのへたなど野菜の余りを、餃子用に刻んだキャベツの絞り汁を使って4%程度にした塩水に漬ける。6年間漬け続けた塩水は白濁し、一晩で野菜がいい味に仕上がるようになる。
展開例:泡菜乾麺(パオツァイガンミェン)
ジュニパー風味の鶏肉、豆苗、アラメ(海藻)、泡菜を手打ち中華麺にのせ、炒った唐辛子の調味料を加え、混ぜていただく。辛い、酸っぱい、シャキシャキやツルツルなど、味と食感の小宇宙が口に広がる。
[材料](すべて適量)
野菜の塩水漬け(泡菜)
平打ち中華麺
アラメ(水で戻す)
鶏肉(蒸してほぐす)
豆苗
自家製ラー油(「食べるラー油」で代用可)
魚醤
[作り方]
[1]塩水漬けの野菜は、大きさを揃えて小さなさいの目に切る。
[2]豆苗は適当な大きさに切る。麺を茹でて湯切りして器に盛る。
[3]具材、自家製ラー油を盛り付け、魚醤をかける。豚肉の茹で汁で作ったスープ(分量外)を添える。
(雑誌『料理通信』2018年8月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
東京・代々木上原「按田餃子」の店舗情報
◎按田餃子
東京都渋谷区西原3-21-2
☎03-6407-8813
11:00~21:30LO
定休日なし
東京メトロ小田急線代々木上原駅より徒歩3分
Instagram:@andagyoza
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
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