粉の味わい豊かな南イタリアの手打ちパスタ「カヴァテッリ」
【DIYレシピ】
2025.12.01
photographs by Masahiro Goda
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。今回は、南イタリアで作られる手打ちパスタ「カヴァテッリ」。もっちりとして粉の味わい豊かなパスタを詳しい解説付きで完全マスターします。
目次
- ■教えてくれた人:東京・芝公園「イタリア料理 樋渡」原耕平さん
- ■粉100g+水分50gを遵守する!
- ■手打ちパスタのポイント
- ■「カヴァテッリ」材料と作り方
- ■展開例:アサリとブロッコリーのカヴァテッリ
- ■東京・芝公園「イタリア料理 樋渡」の店舗情報
教えてくれた人:東京・芝公園「イタリア料理 樋渡」原耕平さん
都内のイタリアンで修業後イタリアに渡り、北から南まで各地で修業。帰国後、東京・麹町「ロッシ」を経て、東京・神保町「ジロトンド」でシェフを約2年務め、2019年10月独立。手打ちパスタはイタリア現地仕込み。
粉100g+水分50gを遵守する!
イタリアでは地方ごとに異なったパスタが食べられてきました。実に百種以上。その違いは気候風土や歴史文化の違いに紐づくもので、タリアテッレなら「粉100gに卵1個」、カヴァテッリなら「00粉を使う」など、使う小麦粉や副材料・作り方や配合などに決まりがありますが、さておき今回は日本の粉と同じ軟質の00粉を使って、僕の経験則でお話ししますね。
粉と塩と水だけで作る場合、よく聞くのは「ゴムみたいに縮んでしまって成形できない」というお悩み。こねたての生地には、縮もうとするグルテンの反発力が働いています。きちんと休ませることでその力が解けて楽になりますよ。また、よく「ぬるま湯で」といいますが、僕の場合60℃と結構アチアチです。温度が低いと硬めになる印象があるので気にしてみてください。
卵を使う場合、ボソボソでひび割れる、つながらないなどのお悩みが。犯人は「水分」ですね。粉100gに対し水分50gがパスタ作りの黄金比。卵も水分の1つと思ってください。大体M玉1個50gと言われるけど、誤差はある。グラム単位で加水して補うとよいです。また日本の冬はイタリア以上に乾燥していて、僕の経験上、気持ち多めの55g換算で打つとベストな仕上りになります。
温度も量も正確に測ることから。それだけで随分、変わってきますよ。
手打ちパスタのポイント
1. ぎりぎり触れる60℃の湯でこねる
2.適度なグルテンでふんわりつなぐ
3.こねすぎNG! 休息も大切に
「カヴァテッリ」材料と作り方
[材料](2人分)
小麦粉(00粉)・・・100g
水・・・50g
塩・・・1g
<使う粉>
北は00粉、南はセモリナ粉
イタリアでは強力、薄力などタンパク質含有量でなく精製度(灰分量)で分け、北部で一般的な00粉は最も純度が高い。乾麺文化の南部では、乾麺に使うデュラム小麦を手打ちパスタにも用いる。硬質小麦の一種で粗挽き(=セモリナ)にして使用。
[作り方]
[1]粉に60℃の湯を加える
ボウルに粉を入れる。中央に窪みを作り、60℃の湯を入れ、フォークで円を広げるように粉を取り込んでいく。【POINT】ある程度高い水温でこねることで、グルテン組成が控えめになり、適度な軟らかさに。水分は練り上がってしまうと生地に入らないため、ここできちんと計量して入れ込む。
[2]すり込むように混ぜる
べたつかなくなったらフォークを抜く。生地と粉を揉むように混ぜていき、しっとりした箇所で粉を拭き取るようにして1つにまとめる。【POINT】水が足りないかもと焦りがちだが心配無用。ボウルが綺麗になるまで粉が残らず入るはず。もし足したければ霧吹きで吹き付けながら練ってまとめていけば入る。
[3]休息① 粉に水を吸わせる
ボウルから出し、親指の付け根で押すように練って1つにまとめ、ラップでぴっちりと包み、30分常温で置く。【POINT】この時点ではまだ、ゴツゴツと粗い状態でよい(左)。30分経つと水分が生地全体に回ってしっとり、まとまりが出てくる(右)。
[4]休息② 生地の緊張を解く
台の上で軽く何回かこねる。生地が滑らかになったら丸くまとめて再びラップに包み、30分置く。【POINT】ここでのこねは、生地のきめを整えるため。こねたては「引き」(反発力)が強く、ゴムのよう。しばらく置くと緩み、扱いやすくなる。
[5]成形① 細く伸ばす
生地を1個約10g程度に細長く分割する。1.5㎝くらいの太さになるよう、細長く丸く伸ばす。【POINT】休ませて弛緩させてからの作業のため、反発も少なく手での成形も楽になっている。このまま細長く伸ばせばロングパスタにも。
[6]成形② ナイフで2押し
食事用ナイフで2~3㎝長さにカットし、ナイフの腹で中央をぐっと押し回すとカヴァテッリの形に。【POINT】なるべく触らない方が、成形はスムーズに進む。ある程度の不揃いはご愛敬。そのばらつきが味わいの深さにもつながる。
[アレンジ]同じ生地でオレキエッテにも
▼
手順5まで、同じように棒状の生地を作ったら、心持ち短めの1㎝長さにカットする。食事用ナイフの刃先でぐっと押し、窪みを指で広げるように裏返すとオレキエッテになる。
左がカヴァテッリ、右奥がオレキエッテ。同じ生地でも、厚みや形状が違えば食感やソースの染み方が変わり、違う印象に。
展開例:アサリとブロッコリーのカヴァテッリ
「アサリとブロッコリーのカヴァテッリ」の材料と作り方
[材料](1皿分)
カヴァテッリ・・・60g
アサリ・・・5個
チェリートマト(半割)・・・3個
ブロッコリー(またはロマネスコ・下茹で)・・・5~6房
塩、オリーブ油・・・各大さじ1
[作り方]
[1]カヴァテッリを茹でる
深鍋に湯を沸かす。塩を少量入れ(乾麺より薄くてよい。目安は塩分濃度0.5%)、打ちたてのパスタを入れる。5分半~6分、時折箸でかき混ぜながら茹でる。ぷっくりと膨らんで艶と心持ち透明感が出れば茹で上がり。ザルに上げる。
[2]具材に火を入れる
フライパンにアサリ、チェリートマト、ブロッコリー、水(またはパスタの茹で汁)40mlを加え、蓋をして中火にかける。アサリの口が開いたら取り出しておく。
[3]乳化させる
フライパンを揺すり、トマトを崩しながら全体にかき回し、乳化させる。
[4]パスタを加える
茹で上げたパスタを3の鍋に加え、1分半~2分ほど、煮汁の中で味を煮含ませるようにしっかり火を入れる。【POINT】粉と水だけで練るパスタは、生地自体に強い味はなく、リーンな味わいなので、ソースの旨味や塩味をしっかり吸わせるのがおいしさのコツ。もっちりとした歯ごたえ、じわりと染み出る旨味が魅力のパスタに仕上げる。
[5]仕上げる
アサリを戻し入れて全体をあおり、皿に盛る。
もっちり茹でたカヴァテッリにアサリだしとトマトの滋味深いソースが染みて、噛み締めるほどにおいしさが増す。
東京・芝公園「イタリア料理 樋渡」の店舗情報
◎イタリア料理 樋渡
東京都港区芝2-15-4-1F
☎03-6809-3037
火~金曜17:30~21:00LO(23:00閉店)
土曜15:00~21:00
日曜12:00~18:00(カジュアルアラカルトのみ)
月曜休、不定休
都営地下鉄芝公園駅より徒歩6分
Instagram:@hiwatasi_info
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2020年3月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
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