フライパン一つで簡単! 素材の甘味と旨味を感じる「夏野菜のフリカント」
プラントベースの始め方54
2025.09.18

text by Kaori Funai / photographs by Jun Kozai
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
目次
教えてくれた人:大阪「オステリア ラ チチェルキア」連(むらじ)久美子さん

東京「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」を経て、イタリアスローフード協会の講習に参加。マルケの食文化に魅せられて現地のリストランテで修業。帰国後、2012年5月現店開店。「野菜本来の味を丁寧に引き出せたら、動物性に旨味を頼る必要はないです」
野菜から出た水分を、煮詰めて戻す
マルケで修業をする前は、イタリア人=肉食というイメージでした。ビステッカを頬張っているような(笑)。でも、彼らと生活してみると、とにかく野菜を摂るなぁと驚きの毎日。その昔、家畜は売り物で、野菜や穀物が食事の中心だった名残もあるのでしょう。
ある日の賄いは、ジャガイモとキャベツのスープと、パンだけということも。畑から採ってきたばかりのハーブや、近所の農家から届けられる野菜は、香りも味も相当強い。そこにイタリアらしい調理が加わると、肉や乳製品に頼らなくとも、深い味が生まれます。
野菜だけで凝縮した味を出すには、水分の飛ばし方がポイントになります。多用されるのが弱火で火を通す蒸し煮。今回紹介する「夏野菜のフリカント」の調理法です。汁で煮込むでもなく、強火でさっと炒めるのでもない、その中間の調理法で、野菜から出た水分を、野菜に「戻す」イメージで火入れをします。
ここで大切なことは、野菜の水分と甘味を引き出すための、攻めの塩使い。塩があとひと振り足りないと、野菜の水分も甘味も十分表に出てきません。味もブレる。私が愛用するシチリア産の海塩は、甘味と複雑味があり、野菜の味わいを素直に引き出してくれます。舐めてみてやんわり甘味を感じる塩で作ると、仕上がりもひと味違ってきます。
「夏野菜のフリカント」材料と作り方
[材料](5人分)
タマネギ(2cmの角切り)・・・大1個
ジャガイモ(皮を剥き2cmの角切り)・・・2個
ナス(2cm×3cm幅に切る)・・・2本
ズッキーニ(種を取り2cm×3cm幅に切る)・・・2本
パプリカ(2cm×3cm幅に切る)・・・大2個
セロリ(1cmの角切り)・・・1本
ニンニク(芯を取り半切り)・・・1片
プチトマト(半切り)・・・15個
ローズマリー・・・1枝
塩(海塩)・・・17g
E.V.オリーブ油・・・50ml
夏野菜+ジャガイモ

食べ応えをアップさせるためジャガイモを加える。野菜の様々な食感も飽きさせない味づくりのコツ。
[作り方]
[1]下準備
![[1]下準備](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/09/plant_based_54_osteria_cicerchia_04.jpg)
セロリなど硬い野菜は小さめに、加熱すると縮む野菜はやや大きめにカット。ナスは塩少量(分量外)を振り約10分アク抜きし、ペーパーなどで水分を拭っておく。
[2]野菜を炒める
![[2]野菜を炒める](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/09/plant_based_54_osteria_cicerchia_05.jpg)
ニンニクとオリーブ油を弱火にかけ、香りを移したら、タマネギを軽く炒める。プチトマト以外の野菜と塩、ローズマリーを加える。
[3]野菜の水分を出す
![[3]野菜の水分を出す](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/09/plant_based_54_osteria_cicerchia_06.jpg)
蓋をする。途中、底が焦げないよう返すが、混ぜすぎると野菜が崩れるので注意。15分後、水分が出てややしんなりしたら、プチトマトを加える。
[4]水分を飛ばしながら蒸し煮する
![[4]水分を飛ばしながら蒸し煮する](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/09/plant_based_54_osteria_cicerchia_07.jpg)
再び蓋をする。鍋底に水分が溜まった状態が続く時は、蓋を半開きにして水分を飛ばしながら蒸し煮にする(約15~25分が目安)。
[5]仕上げる
![[5]仕上げる](https://www.r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/09/plant_based_54_osteria_cicerchia_08.jpg)
鍋底の水分がほとんど飛んだら完成。野菜から出た旨味が再び野菜に戻った状態。器に盛り、オリーブ油(分量外)をかける。

一見、カポナータのように見えるが、フリカントにはジャガイモが入る。弱火で火を入れながらもいかに水分を飛ばすかがポイント。食べる時は、常温もしくは温めると一層、素材の旨味や甘味を感じられる。
(雑誌『料理通信』2019年7月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
大阪「オステリア ラ チェルキア」の店舗情報
◎オステリア ラ チチェルキア
大阪府大阪市西区京町堀2-3-4
サンヤマトビル3F
☎06-6441-0731
18:00~22:00LO、日曜14:00~21:00LO
火曜休(不定休日あり)
Instagram:@osteria.la.cicerchia
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2019年7月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
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